大事なのは、自分が実際に生徒の前で教えている姿を鮮明にイメージ出来るかどうかです。イメージトレーニングはとても良い訓練になりますので、場面を想像しながら読み進めてください。
レッスンを行う際に必要なのが、1コマの流れを書いたティーチングプラン(T.P)です。
要は、レッスンの中でする行動、会話を事細かに紙に書き出したものなのですが、ここで緻密なプランを立てるか立てないかで、レッスンの進み方が全く違ってきます。経験豊富な先生ならば、省略して箇条書き程度に書いてもスムーズなレッスンを行う事ができますが、始めのうちは突然頭が真っ白になって、次に何をすれば良いか分からなくなった...なんて事も起こりがちです。
そんな時に頼れるのはT.Pです。
慣れるまでは、先生と生徒の会話をすべて記入するため、すごい量になり書くのが嫌になってきますが、ここでしっかりと掴んでおけば後がかなり楽になるので、手抜きをしないで書く事をお勧めします。
では、3歳児クラスのティーチングプランを書いてみます。
設定は、初めて英語に触れる3歳6人のクラスです。
T.Pを書く時期は、1,2週目の分(a,b week)を前月の4週目に、3,4週目の分(c,d week)を同月2週目に書きます。
T.Pを書くのに使用する紙は、横罫B4用紙の集計用紙がちょうどいいです。
左から、2行目、12行目、22行目に縦線を入れます。
左上の枠に「Time」その右横の枠に「What to do(a b week)」その右横に「How to do」一番右上の枠に「What to do (c d week)」と書きます。
これで、書き始める準備はできました。
私のレッスンは、1コマ50分で構成されています。
レッスン終了後に、出席カードへシールを貼ったりご褒美の飴を配ったり片付け
をしたりして、60分で教室を後にします。
50分を構成する項目は、次の8つです。
1.ウォーミングアップ(W.U)
2.挨拶と出席(G&A)
3.復習(Review)
4.本日の表現(New)
5.フォニックス(phonics)
6.テキスト(Textbook)
7.テル(Tell)
8.終わりの挨拶(Fare-well)
3歳の子が集中していられる時間は長くても5分程度なので、50分のレッスン時間を8つの項目に区切って、子供の集中力が長く続くようにしています。
それぞれの項目を詳しく見ていきます。
1つ目はウォーミングアップです。子供たちは教室にくる時、色々な気持ちでやってきます。楽しみな気持ちを持った子ばかりだったらいいのですが、中には不安を抱えている子もいますし、眠たい中無理矢理連れてこられる子もいます。
お友達と遊んでいる途中で連れてこられて怒っている子もいるかもしれません。
そんな子供たち相手に、いきなりレッスンを初めて集中させようとしても、なかなか上手くいきません。
そこで、始めの数分間はウォーミングアップとして、子供たちの好きな遊びをして気持ちをリラックスさせます。
やる事は、塗り絵や積み木、かくれんぼなどなんでもいいのですが、クラスの特徴を見ながら選んでください。
体験レッスンなど、全く初めてのクラスの場合はかくれんぼなど、みんなでやる
遊びよりも一人で出来るものの方がいいです。
また、人数が多いクラスだったら塗り絵など一人一人に準備が必要なものも時間が掛かってしまうので、避けた方がいいでしょう。
開講後数回たっているクラスは、おとなしいクラス・元気なクラスなどそのクラスの特徴が掴めると思うので、そのクラスにあったウォーミングアップを選んでください。
2つ目は、挨拶と出席です。
毎回楽しくレッスンに参加出来る様に、上手に出来たら出席カードにスタンプを
押してあげるとか、シールを貼るとかちょっとしたご褒美をあげるといいかもしれません。
3つ目は復習です。
前回のレッスンまでに習った単語やセンテンスを復習します。
子供の記憶力は良い..と言われますが、小学生前の子は定着させるのに少し時間が掛かります。また折角覚えてもしばらくやっていないとすぐに忘れてしまう
ので、毎回必ず復習の時間は入れるようにしてください。
4つ目が本日の表現です。
今月初めて導入する表現です。
5つ目は、フォニックスです。
小さい内からフォニックス法でアルファベットの音を覚えておけば、後々読み書きが楽になるので、フォニックスの練習も毎回レッスンに組み込んだ方がいいと思います。
6つ目はテキストです。
3歳児クラスでは、テキストを1人1冊づつ用意しなくても、インターネットでプリントアウト出来る無料のアルファベットの塗り絵やワークシートなんかでもいいと思います。
7つ目はテルです。
今まで見て来た他の項目では、アウトプット(自分の口から発言すること)よりもインプット(他の人の発言を聞く事)の方が多くなりがちです。
しかし、会話を成立させるにはアウトプット・インプットがバランス良く出来る
ようになる必要があります。
そこで、テルと言う項目を設けてアウトプットの練習を集中的に行います。
最後8つ目が終わりの挨拶です。
終わり良ければ全て良し...最後の締めの時間ですからしっかりやりたいですね。年齢的に、しつけもとても大事な年齢なので、英会話だけではなく、挨拶の時には姿勢を良くする・くつや鞄は揃えて置くなどのしつけ的な事も同時におしえるようにしてください。今日のクラスを振り返り良く出来たところを褒め、次回も気持ちよく来られる環境を作ってあげるといいですね。
集計用紙の準備が出来たら、細かくイメージしながら書き始めます。
まず、「Time」の欄に1. W.Uと記入しその下に:00と書きます。
ここの時間は、実際のレッスンの開始時間を書くのではなく、レッスン開始時=
1つ目の項目はいつも:00になります。
その横「What to do」やる事、ですが、ここではW.Uで「Hello. Nice to meet you.」を導入することにします。
「What to do」の欄にHell. Nice to meet you. と記入してください。
次に「How to do」どう教えるか、です。
初めて英語に触れる子が6人、教室に入って来たらどんな状況になるでしょうか?積極的な子は、教室の中を走り回るかもしれませんが、多くの子はお母さんの横にべったりで、離れようとしません。
それでも、時間が来たらレッスンは始めます。
レッスン時のTeacher(以下T)とKids(以下K)の会話を書き出しますので、想像しながら読んでみてください。
T:O.K, everybody. It's time to start!
(Play Mickey march song.)ミッキーマーチの曲を流し、子供を注目させる。
ミッキーのぬいぐるみかパペットで、曲に合わせ楽しそうに踊る。
曲が終わったら、
Hello, everyone. My name is 自分の名前. And this is my friend, Mickey.
Today, I want you to be my friend too. Is it O.K?
不安気な子、ビックリしてる子が多そうなら日本語で少し説明。お友達のミッ キーが来てくれたんだけど、今日はみんなともお友達になりたいな、いいかな ? みんな笑顔で楽しそうだったら、日本語の説明は必要なし。
Let's play together. Can you come closer?(もっと近くに来て!のジェスチャーを しながら。)
(近くに来た子に対して)All right, good boy / girl. Let's sit down (床に座るジェ スチャー)子供が座る場所が分かりやすい様に、子供用の座布団を人数分用 意しておいてもいいかもしれません。
(ミッキーの手を振りながら)T: Hello. K: .....
(耳に手を当てながら、真似を促す)T: Hello. K: (一人、二人だけ)Hello.
(真似して言えた子は、先生と握手) T: Nice to meet you.
おそらく自分から来れない子が何人かいるので、その子を迎えに行く。
その子の前に座って、 T: Hello. K: .....
2、3回 Hello を言ってみて、反応がなければ無理に言わせなくてもいい。
握手だけしてもいい?と聞いてみる。それも嫌がったら、ミッキーさんと握手
は?と聞く。それでもダメなら、笑顔で T: That's OK. ここで見ててね。
次の子のところへ。
先生またはミッキーと握手が出来た子には、T: Let's go together.
座布団の席へ連れて行く。
以上がW.Uです。「How to do a,b week」に上記の会話をすべて書き込みます。
次はG & Aです。
「Time」の欄にG&A :05と書きます。
:05と言うことは、W.Uを5分で終わらせるという事になります。
開講時のバタバタした状況で、また殆どの子供が緊張して何も言ってくれない
中で、W.Uを5分で終わらせるのは至難の技です。
でも、1週目が1番大変ですが2週目からは子供も多少リラックスしてきますし、徐々に時間を短縮させていく事ができますので、時間オーバーになってしまっても、あまり悩まず、ゆったりした気持ちでやってください。
G&Aの「What to do」は、W.Uでやった"Hello."の復習 と"How are you?"に対する"I'm fine."あと、出席の時の"I'm here."を導入しようと思います。
T.P にConform "Hello". Introduce "I'm fine." and "I'm here."と記入します。
G&Aの「How to do a,b week」を書いてみます。
(座布団の上に座っている子たちに対して)
T: O.K. I'm very happy to see you.
Mickey is waiting here.(ミッキーはここで見ててくれるからね、と言って横に
置く)
Let's say "Hello."again. Hello.
K: Hello.
T: Very good. Thank you. How are you today?
K: ....
T: 元気?
K: (うなずく子が数人)
T: Who is fine today? 今日元気な人?Yes!(手を揚げながら)
K:(数人が手を揚げる)
T: O.K. So you can say "I'm fine."(センテンスごとに何かジェスチャーを決めて、
ジェスチャーをしながら教えると子供も覚えやすいです。私は、"I'm fine."の時
には、両手をグーにして胸の前でガッツポーズの様にして元気を表現していま
す。
Let's say together. (一緒に言ってね。)"I'm fine."
K: I"m......(ジェスチャーを真似してやる子はいるかもしれませんが、1回目の
レッスン時から一緒に言える子はあまりいません。でも、無理に言わせなくて
OKです。レッスンを続けるうちに、徐々に言える様になってきます。)
T: Good! O.K. I'm going to take attendance.(Call kid's name)
K: .....
T: Where is kid's name? I'm here.(先生が手を挙げてI'm here.と言いながら、答え方
を導入)
K: (真似して手を挙げる)
T: Great! Good job.(言えなくても、手をあげれたら、大げさなくらい褒めてあげ
る。全員の名前を呼ぶ)
3つ目の復習は、ここでは今回が初めてのレッスンの設定なので、今回は省略し
ます。
4つ目は”本日の表現”です。
色を導入をします。
「Time」の欄にNew:10、と記入します。
「What to do」の欄に、Color : red, blue, black, white, pink, brown, gray, green, orange, purple, 「How to do a,b week」の欄に、下記の会話を記入します。
T: O.K. Let's play with colors. Look at these picture.(色の絵カードを取り出す)
Do you know what color it is?
K: (数人が日本語で言うか、全く反応なし)
T: O.K. It's red. The color of apple, strawberry or cherry.(果物の絵カードがあれば、
それを見せながら言うと効果的です。)
Let's say it together. Repeat after me. Red, ready!(リーピートさせたい単語の後に
ready! や 1,2!などを付けると、子供はそれを言われたら真似するんだ、と理解
する様になります。)
K: Red.
完璧じゃなくても、少しでも言えたらしっかり褒める。
こうして全部の色を導入。
T: O.K. Let's find the color this time. Everybody stand up, please.
(絵カードを見せて)Do you remember this color? This is red. Now let's find
something red in this room.(同じ色の物、探すよ。何があるかな?)
子供が探せなかったら、先生が探して子供をそこへ連れて行く。
5つ目は、フォニックスです。
少ししたらアルファベットの音を教えますが、今回はまだアルファベットの歌だ
けです。
「Time」欄にphonics:20と記入します。
「What to do」の欄には、Alphabet と書きます。
「How to do a,b week」には下の会話を書き込みます。
T:(色探しが終わった状態から)All right. Come over here and let's sit down.
壁にABCチャートを貼っておき、その前に座らせる。
Let's sing ABC song! (Play music and sing together.)
初めてのレッスンなので、誰も歌わなくても大丈夫です。先生は気にしないで
楽しそうに歌ってください。積極的な子は、歌えなくても真似して口をパクパ
クするので、それだけでも褒めてください。
また先生は、歌に合わせてアルファベットを指でポイントするようにしてくだ
さい。
6つ目はテキストです。
市販の3歳児用のテキストを用意してもいいですし、初めのうちはインターネットでプリントアウトできるワークシートでもいいと思います。
今回は、アルファベットの塗り絵をします。
「Time」欄にText :25と記入します。
「What to do」には、A,a と記入します。
「How to do a,b week」には次のように書きます。
T: O.K. Let's color the picture. Go get your crayons please.(子供がクレヨンを取りに 行っている間に机を用意する)
Please sit down around the table.
(Show them the sheet) Do you remember what alphabet it is?
K: A
T : That's right! (Give out the sheet to them one each.)
A is for an apple. A is for an apron. A is for an ape.
(絵カードがあれば、Aから始まるものをカードを見せながらいいます。)
何をやれば良いのか分からなくなっている子がいないか、注意してみながら
色が塗れたら褒めてあげる。使っている色に対して "This is red." など、常に
英語で子供に話しかける。
全部塗れたら、花丸を付けたりご褒美シールを貼ってあげたりする。
Then clean up your crayon and put them away.
(机を片付ける)
7つ目はテルです。
先生の言っている事を聞くインプット中心のレッスンになりがちなので、この
テルの時間で子供からのアウトプットを促します。
「Time」にTell: 35と記入します。
「What to do」の欄には、color, alphabet, と書きます。
「What to do a.b week」には次の様に書いてください。
T: O.K. Come over here and let's sit down.
Look at this picture.
(子供の興味のありそうな絵ならどんな絵でもいいのですが、今回は初めての
レッスンなので、色・アルファベットなど、今日のレッスンの復習となるよう
な絵を使う事にします。)
What do you see in this picture?(この絵の中に何が見えるかな?)
一人づつ絵の中のものを言ってもらう。言えない子には、”何色?”とか”これ
何?”とかヒントをあげる。
時間になるまで、全員が発言するチャンスが持てる様に配慮し、先生中心では
なく生徒中心の環境づくりを心がける。
8つ目は終わりの挨拶 Fare-wellです。
次回のレッスンに、また喜んで参加してもらう為にも終わりの挨拶は大切です。
例え、先生に叱られてぐずっている子がいたとしても、次回のレッスンまで引きずらない様に、”叱られた点についてはなおしてもらいたいけど、先生はあなたの
ことが大好きだから来週またまってるね”と言う事をしっかりと伝えます。
笑顔で大きな声で終わりの挨拶が出来れば、次回もきっと笑顔で来てくれること
でしょう。
「Time」 Fare-well :45
「What to do a.b week」
T: Sit up and be quiet please.
Did you like today's lesson?
(時間に余裕があれば、”楽しかった?何が一番好きだった?”など、感想をきい
てもいいと思います。)
It's all for today.
Good-bye everybody.
Good -bye means ”さようなら。”
Can you say it? Good-bye!
K: Good-bye.
T: Good. See you next time.
私は、レッスンの最後に必ず子供たちとハイタッチをしてから終わります。
肌と肌を触れてのスキンシップを取る様にしています。
以上で、3歳児初回のレッスン終了です。
T.Pは、基本的に1ヶ月同じ物を使います。
しかし、a,b weekで新しい単語やセンテンスを導入したら、c,d week はその単語、
センテンスの確認作業になりますから、やり方の部分だけ変る事になります。
導入時には、絵カードを見せて先生がすぐにその単語を言い子供がリピートする、という順序になりますが、確認の時には絵カードを見せて、子供に思い出す時間を数秒与えてからリーピートになります。
あとは、子供の反応を見ながらスラスラ言える様になったら他の単語やセンテンスに変えていきます。
逆に1ヶ月を過ぎてもスラスラ言えないようなら、飽きない様にやり方だけ変えて、同じ単語・センテンスを2ヶ月目も教える様にします。